相続放棄・限定承認・一次相続と二次相続
公開日:2020-12-12 21:23
目次
・相続放棄
相続放棄とは、被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄することです。相続放棄は相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きしなければなりません。
放棄の対象となるのは被相続人のすべての財産であり、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含まれます。そのため、相続を放棄した場合、プラスの財産もマイナスの財産もいずれも相続人が承継することはありません。この相続放棄は、裁判所に必要な書類を提出することで認められます。
では、どのような場合に相続放棄を選択するべきなのでしょうか?被相続人について、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)を見比べた結果、マイナス(負債)が多いという場合は、相続放棄をすることで相続によって損害を被ることを回避することができます。
・限定承認
相続放棄を選択すべきかどうか慎重に判断したほうがよいケースもあります。例えば、相続人について資産と負債のバランスが不透明というケースです。このような場合、相続放棄をした後、資産のほうが上回っていれば、相続人は損をしてしまいます。
相続財産について資産と負債のバランスがよくわからないため、財産がプラスであるのかマイナスであるのかわからないという場合、「限定承認」という手続きが有効かもしれません。限定承認とは、相続財産に資産と負債が混在する場合、資産額に限定して負債を相続する(要するに、プラス財産を超えない範囲に限りマイナス財産を相続する)という便利な相続方式です。
限定承認も相続放棄と同じく、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要がありますが、限定承認は、法定相続人が複数いる場合、相続人全員が共同で行わなければならないとされています。
つまり、相続人のうち1人でも反対する者がいれば、限定承認は行うことができません。このように使い勝手が極めて悪いため、限定承認が行われているケースは少ないのが実情です。
・一次相続と二次相続
一次相続とは、両親のどちらか片方が亡くなった後で、配偶者と子供が相続人になることをいいます。そして、二次相続は「一次相続で相続人となった配偶者が亡くなり、子供だけが相続人となること」です。
例えば、夫婦と子供2人という家族で夫が亡くなった場合、一次相続では妻と子供2人が夫の財産を相続し、二次相続では妻(母親)の財産を子供2人が相続することになります。
一次相続と二次相続の違いは「配偶者の有無」と「法定相続人の数」です。
一次相続では法定相続人が妻と子供2人の計3人いたのが、二次相続では子供2人だけとなっています。
法定相続人が減ると基礎控除が減ります。また、他にも死亡保険金や死亡退職金といったみなし相続財産に適用される非課税枠も、法定相続人が減ることによって減額されることになります。法定相続人が減ることによって相続税がかかる可能性は高くなるのです。
一次相続では、相続税を払いたくないのであれば、配偶者が財産をたくさん相続するようにすれば、多くの場合、相続税を軽減できます。なぜなら、配偶者の税額軽減(配偶者控除)が相続税には用意されているからです。
一次相続よりも二次相続の方が大事なのは、二次相続もセットで納税対策をしないと、結果的に多額の相続税を払わないといけなくなる可能性があるからです。
・直系尊属とは
曽祖父母,祖父母,親,子,孫,曽孫という,いわば縦の流れの関係を直系といい,自分を中心として父祖の世代を直系尊属という。同様に子や孫の世代を直系卑属という。
・直系卑属とは
直系とは血のつながりのある縦の流れの関係をいい、卑属とは自分よりも下の世代。したがって、子ども、孫、曽孫などを指す。
執筆:ファイナンシャルプランナー鈴木 裕二