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相続手続きと株式実務

公開日:2020-11-28 15:01

目次


亡くなった方の遺品を整理すると、預貯金通帳の他に、株式に関係する書面が出てくることがあります。しかし、預貯金通帳と比べて、株式に関係する書面は普段目にすることがあまりない方が多いと思います。また、書面の名称や発行する証券会社・信託銀行(以下「金融機関」と称します)も様々であるため、これらの書面が株式の相続にどう関係するのか、非常に分かりづらいものとなっています。

 

そこで、この項目では、株式が金融機関でどのように管理されているのか、及び株式の相続手続きについて触れたいと思います。

 

なお、株式には上場株式と非上場株式の2種類がありますが、

今回は上場株式の場合を取り扱います。

 

<株式の管理方法>

まず、上場株式の管理方法には、以下の2種類が存在します。

 

  証券会社の口座で管理されている場合

  信託銀行の特別口座で管理されている場合

 

「株式は証券会社で管理するものではないのか?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

 

実は、上場株式に関しては、平成21年1月5日に株券の電子化が行われ、株券は廃止となりました。

この際、従来の株券の保管方法等に応じて、以下のように株式の管理方法が変更となっています。

 

  株主が株券を証券会社に保護預りしており、かつ、証券保管振替機構(以下、通称である「ほふり」と称します)の預託に同意している場合

     証券会社の口座でそのまま管理

 

  それ以外の場合

   (例)1 株主自ら株券を保管している場合

   (例)2 株主が株券を証券会社に保護預りしているが、ほふりの預託に同意していなかった場合

     株式の発行会社における株主名簿管理人(主に信託銀行がなる)の特別口座で管理

 

上記に加え、証券会社と信託銀行とで発行する書面の種類も異なります(こちらは後述します)。そのため、亡くなった方が上記の株式を保有する場合、証券会社が作成する書面と信託銀行が作成する書面が混在することになります。これが相続人を困惑させる理由のひとつです。

 

<株式の保有銘柄の確認方法>

株式の相続手続きを行うためには、亡くなった方の保有株式の内訳を知らなければなりません。

亡くなった方がどの銘柄の株式を保有していたのかは、主に以下の書面で調べます。

 

  証券会社から送付される取引残高証明書

  株主名簿管理人である信託銀行から送付される配当金通知書や株主総会招集通知

 

もし、お手元にこうした書面が残されていない場合は、ほふりに対して情報開示請求を行います。

 

これを行うと、亡くなった方の保有株式を管理している金融機関が分かりますので、保有株式のチェック漏れを防ぐことができます。

ただし、開示請求では保有銘柄の詳細までは分かりません。別途金融機関に対して保有銘柄の一覧を請求する必要があります。


執筆:司法書士法人 鴨宮パートナーズ