相続税路線価と実勢価格の違いについて
公開日:2020-12-14 12:00
目次
相続税路線価と実勢価格の違いについて
自分が所有している不動産物件の価格を知りたいと思った時に、よく使われるのが路線価と実勢価格です。
今回は下記
・路線価とは
・実勢価格とは
・路線価と実勢価格との違い
に着目して記載していきます。また、「地価公示価格」についても触れていきますね。
「路線価について」
路線価とは、道路(路線)に面する宅地1平方メートルあたりの土地の評価額のことです。国税庁が毎年7月に1月1日時点の価格を公表しています。
路線価には2つの種類があります。
・相続税路線価/相続税や贈与税の算出基準
・固定資産路線価/固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出基準
通常、単に「路線価」と言われた場合には、「相続税路線価」のことを指します。
「相続税路線価」は国税庁(税務署)が決定し、固定資産税路線価は原則として3年に1度見直され、各市町村(東京都23区内は東京都知事)が決定します。
「実勢価格について」
実勢価格とは、その土地が実際に市場で取引される際の額を指します。土地には定価がなく、時価で売買されるため、過去に売買取引があればそれが実勢価格となります。
注意しておくことは、不動産広告に掲載されているのは「販売価格」であり、売主の希望する価格だということです。通常、売却が完了するまでに売主と買主との間で価格の交渉が行われて金額が修正されることが多いので、実勢価格と販売価格は異なるということを覚えておくようにしてください。
「地価公示価格について」
土地を評価する基準値として路線価と共によく知られているのが地価公示価格です。地価公示価格とは、地価公示法に基づいて国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公表する土地の価格を指します。標準価格とも呼ばれています。
全国の都市計画区域内で設定された標準地について、毎年1月1日時点の1平方メートル当たりの正常な価格を判定し、その年の3月に公表しています。複数の不動産鑑定士が鑑定し、土地鑑定委員会が審査をしたうえで決定、公表しています。
公共事業のための用地はこの価格を基準に決めることになっており、固定資産税評価や相続税評価の基準にもなっています。
「路線価と実勢価格の違いについてのまとめ」
・実勢価格は取引当事者が決める/路線価は国(国税庁)が決める
・実勢価格は都度変動する/路線価は一定期間(1年間)固定した価格
・実勢価格は不動産売買に使う/路線価は税金の計算に使う
となります。土地を評価したり価値を指標化する際には、4つの価格(評価価値)が使われます。これを一物四価(いちぶつよんか)と言い、路線価と実勢価格に加えて、公示地価と固定資産税評価額があります。4つの土地の価格について表にしてまとめました。
【一物四価の比較表】
| 評価時点 | 所管 | 用途 | 目安 |
実勢価格 | その都度 | 取引当事者 | 一般の土地の | ー |
路線価 | 毎年1月1日 | 国税庁 | 相続・贈与時の | 公示地価の80% |
地価公示価格 | 毎年1月1日 | 国土交通省 | 公共用地取得 | 実勢価格の90% |
固定資産税 | 1月1日 | 市町村 | 固定資産税・ | 公示地価の70% |
「路線価から実勢価格を知る方法について」
路線価を使えば実勢価格を知ることができます。
路線価は公示価格の7〜8割程度に設定されており、公示価格の1.1〜1.2倍したものが実勢価格の目安と言われています。これを計算式にすると
路線価÷0.8×1.1=実勢価格
となります。計算例/路線価が20万円・土地面積が60㎡の場合
「20万円÷0.8×1.1=27万5,000円」が実勢価格の目安となります。
路線価は1㎡当たりの単価なので、これに土地面積を乗じます。
「27万5,000円×60㎡=1,650万円」となり、1,650万円が売却価格の目安になります。
路線価を使った簡易の計算方法をご紹介しましたが、この計算方法で出された金額は、あくまでも目安の価格です。
同じものがひとつとしてない個別性の強い不動産物件の場合、路線価を使った簡易の計算方法では、物件ごとに異なる条件(立地の周辺環境、建物の築年数や状態など)が全く反映されていないので、不正確な数値になってしまい、実際の実勢価格とは大きくかけ離れた金額になってしまう恐れがあります。
路線価を使った簡易計算で出した実勢価格で、売却活動を進めてしまうのは非常に危険です。なぜなら、実際の実勢価格とは大きく離れた金額で売却活動を初めてしまうと、早く高く売ることができなくなってしまうからです。
路線価を使って出した実勢価格はあくまでも目安として参考にする程度のものです。一方、不動産査定を行なって出した実勢価格は、不動産会社が実地の調査を行なって、物件ごとに異なる条件を確認して算出したもので、非常に精度が高く実際に売れる金額により近い金額となります。万が一、不正確な実勢価格で売り出して、仮に周辺の相場価格と大きくかけ離れた売り出し価格だった場合、長期間売れ残ったり、最悪大幅に値引き交渉をしなくては売れなくなってしまう恐れもあります。
本来売れるはずの金額よりも低く想定してしまった場合には、損を出してしまいます。
不動産売却を迷っている時点であれば、路線価を使った簡易計算でも構いませんが、売却を決断したら、早い段階で不動産査定を行うことをおすすめします。
相続不動産の評価額について
遺産の中でも不動産の評価額について、遺産分割協議をする関係上、どのように計算したらよいか迷われる方も多いでしょう。
相続が発生して、不動産の評価額を算出する場合、土地については、評価方法がいくつかあります。特に法律ではどの計算方法で算出した評価額を用いて遺産分割をしなさい、と定められていないので、相続人間で話し合って、どの方法による評価額を用いるのかを決める必要があります。
「固定資産税評価額で計算する」
まず一般的に、すぐに簡単に確認できる方法としては、この方法になります。
毎年5~6月頃に固定資産の納税通知書が、所有者に届きますが、その年の不動産の評価額はその納税通知書に記載されています。
もし納税通知書がお手元にないような場合、不動産がある市区町村(23区の場合は都税事務所)の税務課において、「固定資産の評価証明書をください」といえば、発行してもらえます。
※相続が発生していて相続人として取得する場合、相続が発生したことと相続関係がわかる戸籍謄本等が申請時に必要です。不動産の共有者本人の場合、本人確認ができる身分証のみ必要です。
建物について、評価額は主にこの固定資産税評価額で計算される場合が多くなります。
ちなみに、不動産の登記申請時に使用する不動産の評価額については、固定資産税評価額を用います。不動産売買による登記であれば、固定資産評価額の2%、相続による登記であれば0.4%が登録免許税としてかかります。
「路線価を用いて計算する」
相続税や贈与税の申告が必要なケースの場合、相続税の計算方法の基準となる不動産の評価方法として、「路線価」という基準価格があります。
路線価は、1平米あたりいくらという金額が、道路別に決められています。
※都市部の土地についてはほとんど路線価が定められていますが、東京23区であってもまれに路線価がついていない道路もあります。
路線価がついていない場合は、路線価に代わって、「倍率方式」という方法で計算をします。
「時価で計算する」
不動産の時価とは、売買をした場合にいくらになるのか、市場価格と照らし合わせて不動産業者に出してもらったり、厳密に計算をしたい場合は、不動産鑑定士に依頼をして計算をしてもらいます。
ちなみに不動産鑑定士に依頼をした場合、最低でも数十万円と高額になるケースも多いですので、よほど争い事になっていないような相続であれば、そこまでして計算をしてもらうケースは少ないと言えます。
遺産分割協議をする上で、一つの参考となる価格ではありますが、揉めていないようなケースであれば、上記1または2の価格を参考にして、遺産分割方法を決めるのが多いかと思います。その他、家庭裁判所において調停や遺留分減殺請求する場合では、3の時価による計算で決めることになります。
ちなみに、上記1~3の評価方法について、どれが一番高い評価額になるかというと、一般的には以下のような比率になることが多いです。
固定資産の評価額:路線価による評価額:時価 = 7:8:10
※例:固定資産評価額が7,000万円の評価である土地があれば、その路線価は約8,000万円、時価は約1億円程度、ということです。
上記割合はあくまで参考割合となりますので、実際には固定資産の評価額よりも路線価による評価額の方が安くなることもありますし、時価が最も安くなるケースもあります。
相続人間で揉めているわけではないようなケースでは、上記どの評価方法を使うかを相続人全員で決めて、遺産分割方法を決めていくことになります。相続人全員が納得しているようであれば、どの評価額を用いて計算をしても、法律上問題とはなりません。
執筆:株式会社プロバンク 福西