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家族信託について

公開日:2020-12-15 12:00

目次


不動産を所有されている方で将来相続が発生する見込みの方にとって、相続に関するお悩みは尽きないと思います。

その中で最近よく聞かれるのが、「今は元気だが、もし認知症になったら不動産の管理や相続はどうなるのだろう?」という不安です。

自分が思い描いている相続を進めようにも、判断能力をなくしてしまうとそれができなくなります。それに加えて、認知症になってしまったら財産の管理ができなくなってしまい、詐欺に遭って財産を騙し取られてしまうような事態も考えられます。

それ以前に、財産の管理ができなくなると認知症になった後の自分の生活を守ることはできるのか?といったように、考え始めるときりがありません。

将来相続が発生するような不動産をお持ちの方で、認知症になってしまった後の管理が不安な方、更にそうなってしまった時に相続問題が起きないようにしておきたい方には、家族信託という方法があります。

家族信託制度とは、財産を所有している人(委任者といいます)が所有の不動産などの財産を信頼できる家族や親戚に財産を信託しておくと、もし自分が判断能力を失っても信託を受けた人(受任者といいます)が信託した時の意向通りに財産を管理してくれて自分の生活に必要なお金もそこから出してもらえるように取り組んでおくことができる『家族の家族による家族のための信託(財産管理』の仕組みのことです。

では、ここで『家族信託』の代表的なメリットとデメリットをご紹介していきます。


《メリット》

  認知症による資産凍結対策になる

本人の元気なうちから財産管理を託せるとともに、託した後に本人の判断能力が低下・喪失しても、本人の意思確認手続きが本人に対して行われないので、実質的に資産凍結されることなく、受託者主導で財産の管理や処分がスムーズに実行することができます。
具体的には、家族信託を事前に組んでおくことで、老親が入院・入所したために空き家となった実家(老親の自宅)を適切な時期に適正な価格で受託者が売却できる等のメリットがあります。

  委託者の権利保護(委託者が同時に受益者になることで判断能力を失っても生活が守られる)

不動産の所有者にとってのお悩みは亡くなった後にやってくる相続だけではなくなってきています。それというのも、存命のうちに認知症や病気などによって判断能力を喪失してしまうリスクが以前よりも高まっているからです。判断能力を喪失すると、自分の意思表示も難しくなります。そんな時、自分の生活をちゃんと守ってくれるのか?という不安は必ず一度は脳裏をよぎることと思い家族信託で受託者に自分の生活を守ってもらうように信託契約をしておけば、自らが委託者であり同時に受益者となることで、判断能力や意思表示をする能力を失ってしまっても、受託者が自分の生活を守ってくれるので、こうした不安を解消できます。

  二次相続以降の財産承継に意向を反映できる

家族信託では遺産を承継する受益者を何代にもわたって指定することができます。

遺産の承継なら遺言で行えばよいのでは?と思われる方もおられるかと思いますが、遺言で指定できるのは直接渡す相手のみとなります。

たとえば、父親であるあなたが自分の財産(先祖から代々引き継いでいるものなど)は妻に、その次に長男である息子に、そしてその長男の孫にと順番に承継させたいと考えたとします。このとき指定できるのは妻までです。仮に遺言の内容で孫までの承継の内容を書いていたとしても法的に効力を発生させることはできません。

なぜなら、妻があなたの遺言で遺産を承継した時点で、その財産は妻のものとなり、あなたのものではなくなるからです。

遺産を受け取った妻が長男に財産を残す遺言を書かない限り、次の承継者である子供や孫に資産が引き継がれません。仮に妻が遺言を書かずに亡くなってしまった場合は、相続人全員(長男、次男、三男など)で母親に関する遺産分割協議をする必要があります。

ここでよくいう遺産争いが起きてしまうのです。こうなると、長男やその子供の孫に引き継がせたいというあなたの「想い」を実現することが難しくなります。

家族信託によって、特定の財産を将来特定の人(長男や孫)に承継させたいと思えば、それを実現することができます。また、承継させたい財産ではないその他の不動産や預貯金は遺言によって他の相続人(次男や三男)に残してあげればよいのです。そうすれば先祖から引き継いだ財産は無事承継され、家族の間での争いを防ぎ、円満な資産承継を行うことができます。

  受託者の権限で柔軟な財産の管理ができる

判断能力が低下した場合、財産を管理してもらう方法の中で有名なものは成年後見制度でしょう。実際にここ数年でかなり普及してきました。成年後見制度は、家庭裁判所が選任した成年後見人が、判断能力の低下した人の財産管理などを行うというもので、弁護士や司法書士などの専門家がなることが多いです。しかし、この制度のデメリットは、本人のメリットになることしかできない点です。本人のメリットになるとは言えない、例えば相続税対策や資産の組み替えなどは原則として不可能です。一方、家族信託であれば、本人の希望に基づいた柔軟な財産の管理ができますので、相続税対策も可能です。


《デメリット》

    受託者を誰にするかで揉める恐れがある

家族信託の受託者は、親族内の信頼できる人ということになります。本人が指名することには全く問題はありませんが、実際には誰が受託者として選ばれるかという場面で親族の仲が悪くなってしまう可能性がでてきます。家族信託では、本人の不動産の名義が受託者名義になるなど、本人名義ではなく受託者名義になる場面が多々あります。受託者に選ばれなかった人としては、自分をのけ者にされているように感じ、面白く思わないかもしれません。家族信託を活用する際には、受託者として選ばれない人にも十分な理解や、配慮を求める必要があります。身近な人間同士だからこそ、争いの火種を摘んでおくという発想が重要です。

  成年後見人と違って身辺の保護をする権限はない

主に、身上監護という病院への入院や入所手続きなどのことです。

家族信託は、財産管理がメインの契約です。もちろん、身上監護の内容を契約書に含めておくことはできるのですが、成年後見人として入院、入所手続きをすることはできません。同居の家族であれば、入院、入所の手続きをすることが可能な場面も多いでしょう。したがって、家族が受託者の場合、身上監護権がないことで困る場面というのは限られると考えられます。

 

 


 

 

家族信託といえどもできる権限の範囲に限りがあります。

家族間トラブルをすこしでもなくすために公正な財産管理の仕組みを作ることが重要です。そのため、事前に司法書士や不動産業者などに相談して進めることを推奨します。

執筆:株式会社プロバンク 永関