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不動産があると相続でもめる理由 (争族問題について)

公開日:2020-12-16 12:00

目次


不動産は資産価値が高い分、相続トラブルも起きやすいものです。

特に親御さん名義のマイホームや土地などがある場合、親御さんが亡くなった時の遺産相続の際にトラブルになりやすい点でもあります。

実際、それまで仲の良かった兄弟姉妹が遺産相続のトラブルがきっかけで絶縁状態になるというケースも珍しくありません。

「うちはまだ親が健在だから大丈夫」「うちは理解ある兄弟仲が良いからそんなトラブルは起きない」とタカをくくっていると、いざ相続することになった時に予想以上の苦労をするかもしれません。

遺産相続をする場合、有効な遺言書がなければ相続人同士が遺産分割協議を行って遺産の分割法方を決める必要があります。このとき、相続財産の中に不動産が含まれていると、遺産分割協議でもめてしまうことが多いです。どうして遺産に不動産があると遺産分割協議がうまくいかないのでしょうか?

人が亡くなって遺産として残されていたら、相続人同士で遺産分割協議をする必要があります。この場合、遺産分割方法についてスムーズに決めることができず、トラブルになってしまうことがよくあります。

相続でもめるのは、高額な遺産があるケースだと思われているかも知れませんが、実際に遺産分割協議でもめ事が起こって調停になっている件数の多くは、遺産額が5000万円以下の一般家庭です。

遺産分割協議でもめるのは、遺産の総額よりも内容によるところが大きいです。具体的には、遺産に自宅などの不動産が含まれていると、遺産分割協議でもめる可能性が高くなります。

以下で、その理由をご説明します。

  誰が取得するかでもめる

遺産の中に不動産が含まれている場合、その不動産を誰が相続するかでもめることが多いです。相続財産が現金や預貯金なら、単純に1円単位まで分割することができるので、相続人の頭数で割ることなども簡単ですが、不動産はそうはいきません。

不動産は現金のように分割できないので、基本的には1人の相続人が単独で取得することになりますし、そうだとすると、誰が取得するのかという問題が起こります。

  代償金の支払いが出来なくなりもめる

不動産を誰か1人だけが相続することになると、その人が他の相続人に対して代償金を支払わなければならないことがあります。

不動産の相続をする場合、不動産は通常高額なので、1人だけが相続するとその人の取り分が大きくなりすぎて、他の相続人との間で不均衡が起こってしまうことが多いからです。

この代償金について争いが生じることも多々あります。

たとえば、相続財産として3000万円の不動産と600万円の預貯金があり、相続人は長男、次男、三男の3人というケースを考えてみましょう。

この場合、もともとの法定相続分は、3人ともそれぞれ1,200万円ずつ(3分の1)です。しかし、長男が3,000万円の不動産を相続して、次男と三男が300万円ずつ預貯金を相続するとなると、長男の取り分が他の2人よりも2,700万円も高くなって、かなり不公平になっていることがわかります。

この不公平を解消するためには、不動産を相続する人が代償金を他の相続人に支払わなければいけません。長男が弟2人にそれぞれ代償金として900万円払えば、長男の取り分は3,000万円-1,800万円=1,200万円、次男と三男の取り分はそれぞれ300万円+900万円=1,200万円で、公平になります。

ところが、そもそも代償金の金額をいくらにするかということも当然争いの原因になりますし、長男がこの代償金の支払をしない(できない)ことで問題が発生するケースも多いです。

また、その不動産が実家・自宅であり、長男がもともと親と同居していてその不動産に居住している場合などには、長男が相続出来ないと住居を失ってしまうことにもなりかねず、大きな問題になります。

このように、不動産の遺産相続があると、代償金に関連したトラブルがよく発生します。

複数の相続人が1つの不動産の取得を望んだ場合にも争いになりやすいですし、1人が取得を望むケースでも、不動産は通常高額なので、他の相続人との間で相続分の不均衡が起こってしまい、やはり争いになることが多いです。

また、自宅などの住居があると、そこに住み続けたい人、売却・賃貸したい人など、相続人同士で希望は異なり、なおさら争いになりやすいです。

このようなことから、不動産があると、まずは「誰が取得するか」ということでもめてしまいます。

  不動産評価方法でもめる。

そもそも誰が相続するか、代償金がいくらになるかを決めるため、不動産の評価方法でもめることが非常に多いです。

不動産の価格はある程度変動するため、いつの時点を基準にするかで価格が変わりますし、同じ時期でも評価方法によって評価額が変わってしまうためです。

評価方法には実勢価格や相続税路線価、固定資産税評価、路線価など色々な方式があります。また、実勢価格についても、査定を依頼する業者によって数百万円以上の差額が発生してくることもあります。

このように、遺産の中に不動産が含まれていると、相続、遺産分割で争いになる可能性がとても高くなります。

そこで、相続財産に不動産があるときの注意点とトラブルを防ぐための対策を2つご紹介します。

 

1. 安易に共有してはならない

遺産分割協議も長引いてくると、不動産の評価や代償金なども面倒で、つい不動産を相続人全員の共有にしてしまいたくなることもあるでしょう。

実は、遺産分割協議をしなくても、法定相続分どおりの共有なら相続登記もできます。

しかし、安易に不動産を共有状態にしてしまうのはおすすめできません。

共有となった不動産は、自分だけの判断では売却や賃貸などができません。

そうすると、やっぱり不動産が不要となることや、お金が必要だから賃貸して収入を得たいと思ってもなかなかできません。

また、共有者が亡くなって次の相続が発生したとき、更に事態を複雑にしてしまいます。

そのため、大変でも不動産の遺産分割はしっかりまとめておきましょう。

2. 遺言を残してもらう

相続、遺産分割での不動産のトラブルを防ぐには、遺言を残しておいてもらうのが有効です。これまでご紹介したトラブルや争いの原因は、遺言がなく相続人同士で遺産分割協議をして決めるしかないために発生しているものです。

遺言があれば基本的には遺言に従って相続するため、面倒な遺産分割協議や不動産の評価などをしなくても済むようになります。

以上、相続財産に不動産が含まれているときに争いとなる原因と注意点をご説明してきました。

誰が相続するのか、代償金は払えるのか、不動産の評価額はどうなるのかなど、不動産特有の争いが生じます。

そして、相続がいったんもめてしまうと、自分たちだけで解決することはかなり難しくなります。

相続が争続になってしまい、身内どうしで激しい骨肉の争いが繰り広げられることにもなりかねません。

このようなケースを想定して不動産を相続する場合、もめ事が起こる前にまずは専属の弁護士に相談してみましょう。早期に対処することによって、問題が大きくなる前に解決できるのでスムーズに手続きができます。


執筆:株式会社プロバンク 永関