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生前贈与とは

公開日:2020-12-21 12:00

目次


生前贈与とは、相続が発生する前、つまり「生前」に子どもや孫に財産を贈与することです。一般的には相続税の負担を軽減するために節税対策として行われます。親や祖父母が持っている財産を先に子どもや孫に対して贈与しておくことで、遺産相続をするときの相続財産が少なくなり、相続税を軽減できるためです。

また、贈与をする側にとっては、「自分が生きているうちに、あげたい人に、あげたい財産を渡すことができる」「自分の死後に親族間のもめ事を回避できる」などのメリットがあります。また、国としても「若い世代に早く資産を渡すことで経済効果も生まれる」ことを見込んで、生前贈与に関わる税の優遇措置を複数設けています。

しかし通常、贈与をすると受け取った側に「贈与税」がかかります。また贈与税の方が相続税よりも税率が高いのですが、それならばなぜわざわざ生前贈与をする意味があるのでしょうか?

そこで活用できるのが、贈与税の非課税枠や優遇措置です。贈与税の制度を上手に使うことで、税負担が少ない状態で財産を贈与できたり、課税対象となる相続財産を減らす効果があります。

 

贈与すればそこには「贈与税」がかかります。しかも贈与税は相続税より高い税率で課税されます。

ではなぜ生前贈与のほうが相続より良いのか?

 

それは贈与税を減らす方法がいくつかあるからです。

今回はその中でも皆様がよく使われる暦年贈与と子や孫の住宅取得資金等の贈与について説明をいたします。

 

暦年贈与

暦年贈与とは、11日~1231日までの間(暦年)に110万円以下の贈与を行うことをいいます。

この場合には、孫や子の配偶者など相続人ではない人に贈与をするのがおすすめです。相続人とならない人に贈与をすれば、3年以内であっても持ち戻されることがないからです。

相続人であると相続開始の3年以内の場合は3年分は相続税がかかってしまいます。

暦年贈与の最大のポイントが、税務署などへの手続きが要らない点です。贈与額が基礎控除額の範囲内なら、贈与があったことを申告する必要はありません。

ただその際に下記ポイントをしっかりと覚えましょう

 

  贈与の際には契約書を作る

暦年贈与をした証拠を残しておくために、贈与の契約書を作成しておきましょう。契約書は、贈与をするたびに作成することが大切です。なぜなら、かりに毎年110万円を10年間にわたって贈与したら、初めから1,100万円の贈与をするつもりだったとみなされ、最初の年に1,100万円をもらう権利を贈与したとして課税される可能性があるためです。面倒ではありますが、贈与をするごとに贈与契約書を作り、その目的や金額を明確にしておくとよいでしょう。

 

  贈与の記録を残す

現金で手渡しをするだけでは贈与の記録が残りにくいため、銀行振り込みなどで贈与したお金の流れがわかるように記録を残しておきましょう。そのうえで贈与を受けた子や孫が預金口座の通帳やキャッシュカード、印鑑などを管理して、その人が使える状態にしておきましょう。贈与した側もされた側も贈与があったことを認識したうえで、贈与を受けた人が贈与財産の管理をしていることがわかるように記録しておくことが大切です。

 

子や孫の住宅取得資金等の贈与

「住宅取得資金の贈与の特例」とは、子や孫などが自宅を新築・購入したり増改築したりする時に、その資金を親や祖父母から贈与された場合には、一定金額まで非課税とすることができる制度です。さらに、この特例は相続開始前の3年以内に贈与が行われた場合には、相続財産に持ち戻す必要がありません。

 

生前贈与を上手に活用すると、相続税対策になります。しかし、生前贈与の方法は複数あり、それぞれ非課税になる金額や対象になる財産の種類に違いがあります。どの方法を使うと最も有利になるかはケースによって異なり、複雑です。

生前贈与はいつ、いくら、誰に贈与するかなどにより、相続税だけでなくご自身やご家族のライフプランにも影響します。住宅購入資金、教育資金、結婚子育て資金の贈与などライフステージに変化があった時は生前贈与のチャンスでもあります。チャンスを逃さないためにも、自分の場合はどのような贈与を受けるのがよいのか、総合的な観点でアドバイスも受けられるファイナンシャル・プランナー(FP)に相談してみてはいかがでしょうか。


執筆:株式会社プロバンク 千野