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お墓を選ぶ前に知っておきたいこと

公開日:2020-12-10 22:48

目次


《今に伝わるお墓の歴史》

・お墓の始まりは縄文時代

今なお全国各地で古来のお墓が発見されていることからもわかるように、日本では、縄文時代から死者を埋葬する習慣があったようです。なかでも、青森県の「三内丸山遺跡」は有名で、大規模な大人の墓地や、子供のお墓が見つかっています。

続く弥生時代には、甕棺(かめかん)や石棺、木棺で埋葬されていることが主流になっていきました。それとともに、墳墓といわれる、お墓の周りに方形や円形の溝をめぐらしたものも出てくるようになります。お墓の規模は次第に大きくなっていったのです。

その後、古墳時代に入ると、その名のとおり、権力者たちはこぞって巨大なお墓を造るようになりました。代表的なものは、大阪府の「大仙陵古墳(仁徳天皇陵)」で、その大きさは世界でも最大級です。中国の始皇帝陵、エジプトのグフ王のピラミッドと共に、世界三大陵墓の一つと言われています。

ところが、こうした大規模なお墓は、大化の改新により姿をひそめるようになってしまいます。「薄葬令」と呼ばれる法律では、身分ごとに葬儀やお墓について細かく定められていたからです。

 

・お墓と仏教の関係

では、お墓と仏教のつながりは、いつからどのように始まったのでしょうか?一説によれば、鎌倉時代から室町時代にかけて、武士が台頭するようになってからだといわれてます。奈良時代や平安時代には、寺院が貴族の手厚い庇護を受けていましたが、貴族の没落に伴い、武士を中心に仏教が庶民へ布教され始めたことが関係しているようです。また、同じころに位牌と戒名が中国から伝わったこともあり、位牌型の板碑や今日の墓石に近い角柱型のものも作られるようになっていきました。

とはいえ、お墓そのものが庶民と深く関わるようになったのは、江戸時代に入ってからのことです。この時代には「寺請制度」によって、それぞれの家庭がいずれかの寺院の檀家になる必要がありました。その影響もあり、お墓はもちろん、祖先に対する供養や葬儀、仏事に関するあらゆる事柄が生活の中に定着したといえます。

 

・現代のお墓になるまで

個人墓が主流だった江戸時代から、いわるゆ家のお墓が一般化したのは明治時代のことでした。明治7年、当時の東京府の公営墓地として、青山に公園型の墓地が設けられたのを皮切りに、次々と公園型の墓地が造られるようになりました。戦後には、昭和23年に「墓地埋葬に関する法律(墓埋法)」が施行され、4年後の昭和27年には民間が運営する霊園もできました。

現在では、お墓の形一つをとっても、その家ごとに異なります。時代と共にお墓の形態は変化していきますが、お墓参りに行くことで故人を偲び先祖に感謝をする気持ちは、いつまでも変わらずに持ち続けていきたいものです。

 

《お墓を購入するのに良い時期はある?》

・思い立ったら吉日

仏教では、過去、現在、未来で物事を考えます。そしてこれらを合わせて三世(さんぜ)と言います。一番、大切なのは現生で、前世でも来世でもありません。生きている人を基本にした仏教本来の考えでは、お墓をいつ建てたら良いという決まりはありません。大切なのは供養の気持ちです。

ただ、遺骨をお墓に入れなくてはいけないという法律や義務は一切ありませんが、可能なら(お墓がある場合)四十九の法要までに納骨を行いたいものです。それが無理なら一周忌法要までにお墓を建てて納骨するか、おそくとも三回忌までには行いたいものです。

お墓を買うということは費用的にも労力的にも大変なことです。最近では、寿陵墓(=生前墓)を購入する人が増えてきています。自分で納得のいくお墓を求められるのは幸せなことだと思います。お墓や仏壇や礼拝物などは(どんな高価なものでも)相続税の対象にならないので生前にそれらを買われると節税対策になります。必然的にその分のお金は生前の資産から差し引かれるので、後に残った家族の相続税の負担を軽減することができます。不動産取得税・固定資産税などもお墓に関してはかからないので、税金の心配をしないで持っていることができます。

 

・寿陵の話

生きている間にお墓を建てる人が増えています。これを寿陵(墓)あるいは生前墓とよびます。見たことのある人も多いと思いますが、朱で戒名が刻まれているお墓が寿陵です。民間の霊園では最近、申込者の半数近くの方が生前にお墓を求めているケースもあるようです。

古来中国では生前にお墓を建てることは長寿を授かる縁起の良いこととされていました。古書にも「寿蔵」「寿穴」「寿堂」などと書かれています。最近では縁起のためだけではなく、子供に負担をかけたくない、または自分の気に入った墓碑銘や石、場所などを選びたいいという人が寿陵墓を建てているといわれています。

生きているうちにお墓を建てると早死する、または悪いことが起きると言う人もいるようですが、それは迷信です。「寿陵」の寿が示すように「家に幸せをもたらし、長寿が約束される」といわれ、寿陵は大変おめでたいお墓なのです

 

《多様化するお墓の種類》

・一般墓

墓石を建てる従来型のお墓です。管理運営の形態により、公営霊園、民間霊園、寺院墓地の3つのタイプに分類されます。

 

・納骨堂

「納骨堂」は、他人の委託を受けて焼骨を収蔵する為に、都道府県知事の許可を受けた施設のことです。昨今、墓地の不足・家族の形態の変化によって墓地を継承する方が減少し、注目されるようになりました。遺骨を建物の中に納めるため、言わばお墓のマンションとも言えます。

一般的に、お墓を購入する場合は永代使用権、墓石などの高額な費用がかかりますが、納骨堂は使用料・管理料等のみのため比較的費用は低額になります。ただし、お墓は永久に使用することができますが、納骨堂は使用期間が設定されており、期限が来ると再度契約し再度料金を支払う場合もあります。最近では都心部を中心に、ご遺骨の納められた箱がコンピュータ制御され、ICカードをかざすことで参拝ブースに運ばれてくる、自動搬送式納骨堂も登場し話題を呼んでます。

 

・永代供養墓

お墓を継承する人が いなくなったとしても、寺院や墓地管理者が責任を持って永代にわたり、その遺骨を管理してご供養をするお墓のことです。寺院や墓地によって納骨の方法、ご供養の期間、管理の方法、費用などは様々なため、お求めの際は良く内容を確かめる必要があります。

 

・合祀墓

「お墓は、家族のみが眠るもの」という概念をはずし、遺骨を共同で祀る形のお墓のことです。納骨の方法は、はじめから合祀をする以外に、はじめは骨壷のままで墓所に収納し、一定の期間後に合祀にするケースもあります。また、合祀墓の形態には、ロッカー形式・仏壇形式などがありますが、費用も供養方法も当然変わってきますので、必ず現地をご自分の目で確認して納得行くまで説明を受けて下さい。

 

・樹木葬

墓石の代わりにシンボルツリーとよばれる樹木を植え、その周りにご遺骨を埋葬します。

 

・海洋散骨

ご遺骨をパウダー状に海にまく供養方法。散骨後、お参りをする場所があいまいになるため、家族や親族の理解を得てから行うことが必要となります。

 

 

《一般墓地の3つのタイプとは?》

・寺院墓地

お寺の境内、または近隣にあり、その寺院が管理している墓地のことをいいます。寺院のお墓を得るということは、そのお寺の檀家になることが前提となっている場合がほとんどなので、必ず住職にお寺の行事やお付き合いの仕方について確認した方がよいでしょう。同時に、住職の人柄についても、長く信頼してお付き合いができるかどうか考慮に入れる必要があります。

利点としては、手厚く供養していただけるという点です。お墓が境内にあるため法要を本堂でいとなむことができ、また、頼めばいつでも僧侶が読経して供養してくれます。お墓がお寺の中にあるため、墓所内の管理も安心できます。

 

・公営墓地

都道府県、市町村などの地方自治体が管理・運営している墓地です。申し込み先は各都道府県や市町村役場になります。

公営墓地は、墓地にとって最も重要な永続性が保証されて、かつ、永代使用料や管理費が安く抑えれています。また、自治体が管理しているため、宗旨・宗派による宗教的な制約は一切ありません。

ただし、申し込み資格に関しては条件がつきます。たとえば、「現住所がその自治体にある」、「ご遺骨がある」などです。募集の時期に関しても、ほとんどの自治体で募集期間が決まっており、希望者が多い場合は抽選となります。また、立地の面で不便な所も少なくありませんので、申し込みに当たっては十分な検討が必要です。

 

・民営霊園

財団法人や宗教法人が経営主体となっている霊園で、宗旨・宗派を問わずに申し込むことができます。

公営霊園に比べると永代使用料や管理費などは多少割高ですが、管理棟や礼拝室などの施設が充実し、園内もきれいに整備されており、いつでも気持ちよくお参りに行くことができます。また、公営霊園のような申し込むための条件や抽選もなく、いつでも誰でもお申し込みをすることができます。

 

《人気の高い都立霊園とは》

都立霊園は、東京都が管理・運営する、宗教を問わない公営の霊園です。青山、雑司ヶ谷、谷中、染井、多磨、小平、八王子、八柱と8ヶ所あり、毎年一部霊園を除き募集が行われています。

申し込みの受付は、年一度6月下旬から7月初旬頃にかけてありますが、申込みには居住年数やご遺骨の有無など一定の資格が必要となります。また、毎年応募者が多く抽選となり、区分によっては10倍を超える高倍率となります。

都立霊園は一般埋蔵施設のほか、合葬埋蔵施設、樹木型合葬埋蔵施設など、跡取りのことで心配のない区分もあります。

なお、八柱霊園に限り、霊園が所在する松戸市にお住いの方も申し込みをすることができます。

 

《一般墓地を選ぶ時のポイント》

・立地

お参りに行きやすい所が一番。一般的にお連れ合いの方が亡くなるころには、皆さんもそれなりにご高齢のはずです。お墓参りに行くには遠方では大変ですので、自宅から1時間以内で行ける霊園で決める方が多いようです。また、車だけではなく、公共の交通機関を使ってのアクセスもチェックしましょう。最寄りの駅からお参り用の無料送迎バスがあり、便利に行ける霊園もあります。

 

・価格

墓所を求めるには、まずは永代使用料、管理費、墓石代、彫刻代が必要です。お墓を建てた後は、管理料の他にも、埋葬、法要時の諸費用、寺院墓地の場合はお布施などが掛かります。担当する石材店、または墓地管理者に、掛かる費用を確認しましょう。

 

・管理

墓地では管理者が定期的な清掃や見回りにあたりますが、中には管理事務所が無く管理人が常駐せずに、園内の清掃や手桶などの備品の管理がしっかりと行われていない墓地もあります。管理体制についても必ず確認しましょう。

 

・設備

管理事務所や駐車場、休憩所、法要設備など、諸設備の有無や規模は重要です。また、墓所内が平坦で、お年寄りや車いすの方でも安心してお参りができるかどうかも確認しましょう。

 

・宗旨・宗派の規定

民営霊園や公営霊園の場合は、一部民間霊園を除き宗旨・宗派に制限はありません。寺院墓地の場合には、同じ宗派の方か、他宗派の場合には、その宗派に改宗しなければ、原則としてその墓所は購入できません。寺院墓地を検討する際は、自分の家の宗派を確認することが大切です。

 

・運営主体の信頼性

墓地の運営は永続性の観点から、公共性の高い自治体や宗教法人が行っています。しかし、それぞれの墓地は、主に管理費で墓地を運営し、存続していきますので、将来、予算が足りなくなって充分な管理がされなくなる場合もあります。ですから、墓地を求めるときは、その霊園の将来を見極めて購入しましょう。また、お寺の場合は、法要などをその寺院に頼むようになるため、住職の人となりが信頼できるかどうか充分に確認しましょう。

 

《お墓を建てるときに掛かる費用とは》

・永代使用料(墓地使用料)

お墓を建てるときに「墓地を買う」と言われる方が多いですが、正確には「墓地の永代使用権を買う」ことで、土地そのものを買うわけではありません。永代使用料は申込時に一度のみ支払い、使用権を継いだ場合には再度支払うことはありません。

永代使用料は安価な順に、公営、民営、寺院と言われています。しかし、公営霊園は面積が2㎡や3㎡以上の大きな区画しかないことが多くそれなりの金額になるため、金額だけの比較ですと、1㎡以下のコンパクトなサイズの区画が多い民営霊園の方が、安価になるケースもあります。

なお、永代使用料は非課税です。

 

・墓石費用

墓石の費用は、墓石本体、工事費、彫刻代、消費税の総額です。墓石の価格は区画の大きさと石の種類によりかなりの幅がありますので、石材店の担当者に自分たちの希望を伝え、必ず見積もりを取りましょう。

墓石に一番必要なことは耐久性です。硬度が高く、水を吸いにくい石を選ぶことをお勧めします。

 

・管理料

墓地内の参道、水道、駐車場など、墓地の使用者が共同で使う施設の維持、管理に充てられます。支払いは年間払いが多いです。

管理料は滞納すると、使用権が取り消されることもありますので、忘れずに支払うようにしましょう。

 

《ゆとり墓所や芝生墓所など墓所のタイプも様々》

・一般墓所

隣の墓所との境界をはっきりとさせるために外柵と土台を作り、その上に石碑を建てる伝統的なお墓のスタイル。面積の大きい墓所に多く見られる。

 

・ゆとり墓所(緑地付き墓所)

左右の隣接する墓所との間に20㎝程度の空間(ゆとり)を設け、ゆったりとした墓所を演出します。面積の小さい墓所で取り入れられ、面積以上に広い墓所に感じられます。

なお、空間部分に芝生や玉竜を植え、緑地付き墓所と呼ばれることもあります。

 

・芝生墓所

欧風のお墓をイメージした墓所。土台を作らずに、芝生が敷かれた地面に直接石碑を建てるタイプの墓所です。

 

 

《指定石材店制度とは?》

民間墓地や寺院墓地で採用されているシステムで、墓石工事は墓地管理者が指定した石材店だけが行えます。「石材店を自由に選べない」と思われますが、この制度は霊園・墓地の永続性や墓石の保証という観点から、「素性のはっきりとした信頼のある石材店に限定する」という考えに基づいています。

しかし、突然霊園に見学に行った場合、待機している石材店を順番で割り振られて紹介され、希望する石材店で墓石工事ができないことがあります。墓石工事をお願いしたい石材店がある場合は、あらかじめその石材店とコンタクトを取り、霊園見学を直接申し込むようにしましょう。

寺院墓地の場合は、ご住職の許可が得られれば墓石工事ができるケースも稀にあります。公営霊園では指定石材店制度はありませんので、どこの石材店でも墓石工事を行うことができます。

 

《墓相って何?》

私たちのまわりには、手相、家相、人相など「相」と付くもので命運を占う方法がありますが、それと同様にお墓の向きや建て方、形、色などで、家族の運勢を見ようというのが「墓相」です。

墓相学は紀元前の中国で発祥した風水地理学を源流としており、先祖をどの地に埋葬するか、墓の向きをどうするかとった墓地環境が、家族や子孫の繁栄に大きな影響を与えることを知り得てきました。例えば、吉方向は、東向き、南向き、東南向き、凶方向は、西向き、北向き、西北向き。また、青色、黒色、深紅色は凶相で、白色は吉相と言われています。

しかし、仏教には「墓相」という記述はなく、「お墓の建て方はこうあるべきだ」といったような教えはありません。「墓相」をどのように捉えていくのかは、手相、家相、人相などと同じように、実際にお墓を建てるその人自身の考え方次第ということになるでしょう。

 

《ペットと一緒に入れるお墓》

ペットが亡くなった時、過去に自宅の庭に埋葬をしたという話を耳にしましたが、最近は住宅事情も変わり、特に都市部では自宅の庭に埋葬することは現実的ではありません。ペットの遺骨をどこに埋葬すればよいのかわからず、そのまま自宅に安置する方や、ペット専用の合祀墓に埋葬するなど、希望通りの供養ができずに心の負担になっている方も多いと聞きます。

そのような悩みを解決するために、最近ではペットと一緒にお墓に入れる霊園が増えてきています。霊園内の全区画でペットと一緒に入れる霊園と、区画が限定されている霊園がありますので、詳しくは石材店に相談してみましょう。

 

《世界のお墓事情》

・アメリカのお墓

かつては教会に併設された教会墓地に埋葬するのが一般的でしたが、現在では広大な敷地を持つメモリアルパークなどに埋葬されるケースが多くなっています。家族単位よりも個人単位でお墓を建てることが多いです。また、最近では火葬の割合も高くなってきており、その割合は25%を超えると言われています。

 

・ヨーロッパのお墓

教会の敷地に埋葬する習わしが続いていたヨーロッパですが、1804年パリに庭園式霊園のペール・ラシューズ墓地が開園したことにより、以降、霊園に埋葬する傾向が強くなってきています。ヨーロッパではカソリックの国は土葬が主流ですが、プロテスタントの国では火葬が増えてきています。

 

・中国のお墓

土葬の習慣があった中国ですが、最近では政府が火葬を推進しています。また、年間死亡者数が800万人を超えるともいわれており、政府は散骨なども推奨し、土地や資源の節約を図ろうともしています。富裕層においては、墓地や殉教品を恒久化するケースも出てきているようです。

 

・韓国のお墓

韓国では回りが芝生で覆われた土饅頭型のお墓が主流でしたが、火葬化が進み、石造りの墓や樹木葬などが急速に広がりつつあるようです。特に、樹木葬は国民の半数近くが好むという統計が出ています。

 

・イスラム教徒のお墓

イスラム教徒の埋葬は、全て土葬で行われます。イスラム教では、死は一時的なものであり、アッラーの審判の日に再び蘇ると信じられているからです。また、お墓や遺体の頭は、全て聖地メッカの方角に向いて埋葬されます。

 

・お墓のない文化

インドやインドネシアのバリ島のヒンドゥー教では、火葬場で焼かれた遺灰を川に流す水葬。チベットやインドのゾロアスター教徒は葬儀後に鳥に遺体を食べさせるという鳥葬などをおこなっています。


執筆:須藤石材株式会社