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お墓参りの心得

公開日:2020-12-10 22:54

目次


《お墓参りはいつ行く?》

お墓を建てた後は、定期的にお参りに行きましょう。お彼岸やお盆の時期だけではなく、故人の誕生日や命日、家族のライフイベントの報告など、思い出したときは気軽に行かれるとよいでしょう。

生前にお墓を建てた場合も、誰も入っていないからとそのままにせず、定期的にお墓に行き掃除をしてください。墓石に取り付いた砂やほこりの汚れを水拭きこまめに落とすだけで、石が風化を予防でき、きれいな状態を長く維持できるようになります。

お参りに行く際の服装は、きちんとした身支度で行きたいものですが、お墓を掃除するときに汚れることもありますので注意しましょう。

霊園に売店が無い場合は、生花や線香を買っていきます。墓石をふく雑巾も忘れないようにしましょう。

 

《お参りの作法》

お墓についたら、まず、お墓の掃除をしましょう。掃除が終わったら、花立に水を入れお花を飾ります。次に用意した供物をお供えします。線香に火をつけてお参りをしますが、線香は束のまま火をつけて、人数分に分けてお供えするのが一般的です。

お参りの順番は、個人と縁の深い方からとなります。まず、はじめにお線香をお供えし、墓石に水をかけます。水は「清浄なもの」の象徴で、水をかけることにより、ご先祖様の霊を清めるとされています。

そして、ご先祖様の眠る墓石に向かって合掌し、冥福を祈ります。墓石よりも体を低くするのが礼儀正しい作法と言われており、しゃがんで合掌礼拝します。

お参りが終わったら、お供えは鳥や猫などに荒らされないように持ち帰るようにします。また、古くなったお塔婆は、本数が多くなると風に煽られ倒壊することがありますので、抜いて墓地の焼却炉でお炊きあげをしてもらいましょう。

 

《合掌の仕方》

合掌はインド生まれの祈りの形で、二通りのやり方があります。一般的なのは、右手(仏様)と左手(自分)の指と指をぴったりと合わせる方法で、仏と自分が合体し祈る心になるとしています。

もう一つは、両手の指をそれぞれの間へ交互に組み合わせて合掌する方法で、十二合掌(密教)と言われる方法です。

また、お参りをするときは、数珠を手に合掌するのが作法です。数珠は仏教徒のシンボルだと言われていますが、それ以上に、ご先祖様への功徳を何倍にもする力があるとされています。それゆえ、数珠をもってお参りすることは、ご先祖様に対してより良い供養となることでしょう。

 

《お墓のお掃除は定期的に》

久しぶりにお墓参りに行くと、草が生え放題で墓石もホコリやシミが目立ち、よごれがひどいことがあります。墓所から離れて暮らしていると、あまりお参りに行くことができず、お墓の汚れについて悩んでいる方も多いようです。

多くの霊園では、管理料を毎年、あるいは複数年分まとめて支払うようになっています。管理料を支払っているから、お墓の掃除は霊園や寺院がやるものだと考える方がおりますが、管理料は参道や水道、管理棟など、墓地の所有者が共同で使用する設備や施設の維持、管理に充てる費用のため、墓所内の清掃は自分自身で行う必要があります。

なかなかお墓参りに行くことのできない方のために、有料で定期的に墓所内の清掃を行っている霊園もあります。ご希望される方は、そのようなサービスがあるかどうか、霊園の管理事務所や墓石を購入した石材店にご相談してみてください。

 

《自分でできるお墓のお手入れ》

・墓石を洗うこと

まずははじめに枯れた花、線香の燃えカスなどを取り除きます。墓石は、水を含んだスポンジかやわらかい布で洗います。それでも汚れが取れない場合、たわしを使ってもかまいません。ただし、彫刻部分や角は欠けやすいので、力を入れすぎないようにやさしく磨いてください。彫刻の掃除には歯ブラシを利用すると便利です。

 

・敷地内の草むしり

草むしりのためには、小さな窯を持参すると便利です。玉砂利が敷いてある場合、砂利の間の草の根っこが取りにくいのですが、鎌があれば簡単に取ることができます。

敷地内に植木が植えてる場合、木が大きくならないようにせん定する必要があり、植木ばさみを持参することをお勧めします。木が大きくなると、根っこが広がり石の柵を圧迫し、ひび割れや崩れの原因にもなるため、大きくなりすぎた場合は、石材店に相談し植木を処分することも検討しましょう。

草むしりをすると、墓石のまわりに敷いた玉砂利が土に沈んで見苦しくなってしまうことがあります。この場合、園芸用のシャベルで玉砂利を掘り起こして、目の粗いザルに入れ、洗ってから敷きなおします。玉砂利の汚れがひどく水で洗っても落ちない場合は、石材店に頼んで交換すると見栄えが良くなります。

 

《お盆》

・お盆とは?

「盂蘭盆会(うらぼんえ)」のことで略してお盆と言います。お盆の行事は『盂蘭盆経』に説かれている目連尊者の話に由来します。目連はお釈迦様の弟子の中でも神通力が一番と言われていました。ある時、目連はこの神通力を使って母親の死後の世界を見ます。すると、母親は餓鬼道に堕ちて飢えと渇きに苦しんでいる姿を目にします。そこで目連はお釈迦様にどうしたら母親を救えるのかたずねました。お釈迦さまは「お前は母親の生前、物惜しみして他人に布施をしなかった。代わりにお前が布施行をしなさい」と言われました。目連はお釈迦様の教えにしたがい、僧侶たちの夏の修業期間のあける7月15日に多くの僧や貧困に苦しむ人たちに飲食物などを施しました。すると、その功徳によって母親は極楽往生がとげられました。それ以来(旧暦)7月15日は、父母や先祖に報恩感謝をささげ、供養する重要な日になったのです。

現在、日本各地で行われているお盆の行事は、各地の風習や、宗派による違い(例・浄土真宗では霊魂が返ってくるとは考えません)によって様々ですが、一般的に先祖の霊が家に帰ってくる期間だとされています。

 

・迎え盆・送り盆

13日の朝、ご先祖様の霊を迎える「精霊棚」をつくります。そして、13日の夕方から夜にかけて菩提寺とお墓にお参りをし、先祖の霊を迎えます。これを「精霊迎え」ともいい、この時に霊が迷わずに帰ってこられるように焚くのが「迎え火」です。

16日の「送り盆」の日に、お盆の間一緒にすごした先祖の霊を送り出すのが「精霊送り」です。この時には「送り火」を焚きます。

なお、精霊棚はお供え物をする棚で、特に決まったまつり方はありません。むしろを敷き、その上に供物や蓮の葉、故人の好きな花、旬のものなどを飾ります。

 

・棚経

お盆の期間に菩提寺の僧侶が棚経にまわられますので、お布施を用意しておきます。また、遠方から来ていただいた場合には、お車代もお渡しすることをお勧めします。

 

・新盆(あらぼん、にいぼん)

故人の四十九日の忌明けの後、初めて迎えるお盆をいいます。四十九日よりも前にお盆を迎えた場合には、その年ではなく翌年が新盆となります。新盆は普段のお盆よりも丁寧に営みます。

 

・新盆提灯・盆提灯

地域により異なりますが、故人の霊が道に迷わず家に戻れるように、目印として提灯を灯します。新盆には新盆提灯として白張りの提灯、そして親せきや縁者からのお供えには柄のついた提灯を用いることが多いです。

 

《お彼岸》

・お彼岸とは?

お彼岸は「彼岸会(ひがんえ)」とも言い、春は3月20日頃の春分の日を挟んで前後3日ずつ、秋は9月23日頃の秋分の日を挟んで前後3日間ずつのそれぞれ1週間のことをいいます。

彼岸は向こう岸を意味する言葉で、迷いの多い此岸(この世)に対して、仏の理想の世界である向こう岸、つまり悟りの世界や浄土のことを言います。日本では、その浄土に渡るために、善事を行い、先祖に思いを馳せ、供養を行う期間を彼岸と言うようになりました。

仏教には西方浄土といって、西に極楽があるという考えがあり、春分の日、秋分の日とも、真東から出た太陽が、浄土があるとされる真西に沈む日であることから始まった日本独自の行事です。約1200年前に全国の国分寺の僧侶らが、春と秋の2回、7日間にわたり仏をたたえてお経をあげたと伝えられています。それから次第に、一般人にもお彼岸が広まったとされます。仏教行事ですが、インドや中国にはありません。お彼岸は、暑さ寒さも彼岸までというように、季節の変わり目を実感させる、日本の四季のシンボル的存在でもあります。

 

・お彼岸の供養

お彼岸は、仏教精神を生活の中で実践する日でもあります。仏教では、六波羅蜜といわれる6つの徳目を実践して修行を成しとげれば、彼岸、つまり極楽浄土の悟りの世界に渡ることができると言われています。

 

6つの徳目

1、布施(ふせ)・・・・他人へ施しをすること

2、持戒(じかい)・・・戒律を守ること

3、忍辱(にんにく)・・不平不満を言わず耐え忍ぶこと

4、精進(しょうじん)・常に仏道を精進努力すること

5、禅定(ぜんじょう)・心を安定させること

6、智慧(ちえ)・・・・真実を見抜く力を働かせること

 

・お彼岸の過ごし方

家庭では仏壇を掃除し、新しい花や季節のもの、おはぎ、彼岸団子などをお供えして供養をします。家族そろってお墓参りにも行きましょう。特に子供をお墓参りに連れて行くことは、ご先祖様を敬う気持ちを通して、人を大切にする気持ちを育てることにつながります。

菩提寺で営まれる「彼岸会」にも参加しましょう。正式な法要に参加することは、供養の心を育てるだけではなく、伝統的な仏教文化に触れる絶好の機会でもあります。時間が無い場合でも、本堂のご本尊へのお参りとご住職へのあいさつは欠かさないようにしましょう。

 

《卒塔婆》

・卒塔婆とは?

お盆やお彼岸、納骨や年忌法要の時に、お墓の後ろに建てる1mから2mくらいの期の板のことです。

卒塔婆には、墨で戒名とそれぞれの宗派の聖句、あるいは梵字などがかかれています。死者の供養のために建てるものですが、浄土真宗のように卒塔婆を建てる習慣が無い宗派もあります。

卒塔婆はもともと、古代インドの言葉でストゥーパという言葉を音訳したものです。ストゥーパとは、仏塔とも訳され、お釈迦様の遺骨を納めた塔のことをいいます。お釈迦様が入滅すると、遺骨が8つに分けられ、8つの国に遺骨を安置するための塔が建てられました。後には、お釈迦様だけではなく、高僧が亡くなってもストゥーパを建てるようになりました。

ストゥーパはもともとお椀を伏せたようなかたちをしていましたが、時代をおって変化し、また、仏教が中国を通って日本にくる間に、色々なかたちに変化しました。

現在の卒塔婆は、お墓に石碑として建てられる五輪塔が元になっています。五輪塔も元をたどればストゥーパで、仏教の世界観である、「空・風・火・水・地」の5つの要素が表現されてますが、卒塔婆も同じような形をしております。

 

・卒塔婆はどうして建てる?

卒塔婆は故人の供養のために建てられます。お墓は「○○家」と刻まれており、先祖代々の供養のために建てられるものですが、卒塔婆には死者の戒名が書かれ、個人の供養のために建てられます。卒塔婆は故人へのお手紙といわれることもあります。

お盆やお彼岸、年回帰のとき、お寺から「卒塔婆を建てて供養しておきますよ」と言われることがあります。また、用事があって法事に行けないときに、「卒塔婆を建てておいてください」と住職に電話する人も多いようです。

こうした時は、故人を供養する良い機会です。できるだけ卒塔婆供養をお願いした方をお勧めします。また、その時には必ずお寺に供養料を納めてください。卒塔婆の大きさによって、供養料が決められているお寺が多いようです。

また、卒塔婆は法要のたびに建てるため、複数の古い卒塔婆がそのまま放置されている墓所があります。塔婆立が倒壊することもあるため、墓地の管理者に相談し、古い卒塔婆は早めに処分しましょう。

 

・施餓鬼会と卒塔婆供養

お盆と共に夏の行事のひとつとなっているのが「施餓鬼会(せがきえ)」です。本来、この「施餓鬼会」はお盆とは別の行事です。地域によって5月の連休中や、年忌、百ヶ日の法要などと合わせて行う場合もあるようですが、大半の地域ではお盆の期間に行われています。その際にも、卒塔婆を建てて供養を行います。

仏教でいう「餓鬼」とは、いつも飢えと渇きで苦しんでいる亡者のことです。「餓鬼」の世界はまさに飢えの世界で植物があっても食べることのできない世界です。食べても喉がハリのように細くなって飲み込むことができなかったり、食べようとして手にすると、その食物が燃え尽きてしまったりします。このような「餓鬼」に飲食(おんじき)を施して救い出すのが施餓鬼です。

自分の力でその苦しみから抜け出すことのできない餓鬼にとって、「施餓鬼会」が唯一の救いになるとされています。「施餓鬼会」の法要では、お寺に設けられた施餓鬼壇に「三界万霊」と書いた位牌を安置し、檀家の人が持ち寄った米や野菜、果物、菓子などと一緒に卒塔婆を建てて法要を行って亡者を供養し、その滅罪追福を祈ります。

執筆:須藤石材株式会社