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生前贈与・名義預金・贈与税の基礎控除・贈与税

公開日:2020-12-12 21:17

目次


・生前贈与

生前贈与とは、相続が発生する前、つまり「生前」に子どもや孫に財産を贈与することです。一般的には相続税の負担を軽減するために節税対策として行われます。親や祖父母が持っている財産を先に子どもや孫に対して贈与しておくことで、遺産相続をするときの相続財産が少なくなり、相続税を軽減できるためです。
また、贈与をする側にとっては、「自分が生きているうちに、あげたい人に、あげたい財産を渡すことができる」「自分の死後に親族間のもめ事を回避できる」などのメリットがあります。また、国としても「若い世代に早く資産を渡すことで経済効果も生まれる」ことを見込んで、生前贈与に関わる税の優遇措置を複数設けています。



・名義預金
名義預金とは、自分の通帳に財産を置いておくのではなく、親族などの通帳の名義を借りて、そこに自分のお金を預けておく状態をいいます。例えば、口座名義人は子供でも、実際には親が口座を管理していて真の預金者は親である場合、その預金は名義預金です。
子供名義の口座であっても、親が通帳、届印、キャッシュカードを管理していて、子供が自由に引き出して使用することができない状況であった場合や、入金を子供に伝えていなかった場合は、贈与が成立したと認められずに、親の名義預金となり、相続税の課税対象となってしまいます。



・贈与税の基礎控除
贈与税の基礎控除額は、110万円以内です。つまり、1年間で110万円以内の財産を生前に贈与しても、税金はかかりません。110万円を超えた場合は、その超えた部分に贈与税が課税されます。
ひとりにつき110万円まで基礎控除があると聞くと、4人から110万円ずつもらえば、それがすべて非課税だととらえてしまう人がいるかもしれませんが、贈与する側ひとりにつきではなく、贈与される側ひとりにつきです。もらうひとひとりにつき110万円まで非課税なので、440万円贈られれば、基礎控除額の110万円を引いた額に税金がかかります。




・贈与税
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。会社など法人から財産をもらったときは贈与税はかかりませんが、所得税がかかります。また、自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合、あるいは債務の免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。ただし、死亡した人が自分を被保険者として保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合は、贈与税でなく相続税の対象となります。贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。

贈与税の計算は、まず、その年の11日から1231日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計します。続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。次に、その残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。平成27年以降の贈与税の税率は、次のとおり、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されました。

【一般贈与財産用】(一般税率)
この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用します。
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。
基礎控除後の課税価格      税率      控除額
200
万円以下 10%     -
300
万円以下 15%     10万円
400
万円以下 20%     25万円
600
万円以下 30%     65万円
1,000
万円以下       40%     125万円
1,500
万円以下       45%     175万円
3,000
万円以下       50%     250万円
3,000
万円超        55%     400万円

【特例贈与財産用】(特例税率)
この速算表は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の11日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。
「その年の11日において20歳以上の者(子・孫など)」とは、贈与を受けた年の11日現在で20歳以上の直系卑属のことをいいます。
例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。(夫の父からの贈与等には使用できません)
基礎控除後の課税価格      税率      控除額
200
万円以下 10%     -
400
万円以下 15%     10万円
600
万円以下 20%     30万円
1,000
万円以下       30%     90万円
1,500
万円以下       40%     190万円
3,000
万円以下       45%     265万円
4,500
万円以下       50%     415万円
4,500
万円超        55%     640万円



・相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。贈与時には贈与財産に対する軽減された贈与税を支払い、その後相続時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税額を精算します。
この制度には2,500万円の特別控除があり、同一の父母または祖父母からの贈与において限度額に達するまで何回でも控除することができ、2,500万円までの贈与には贈与税がかからないことになります(ただし、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税の基礎控除(110万円)の利用はできません)。
贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた額に対して一律20%の贈与税が課税されますが、その贈与税は相続時に相続税額から差し引かれ、相続税額が少ない場合は差額が還付されます。相続時精算課税制度は、選択制ですから、例えば父からの贈与については選択するが、母からの贈与には選択しない(従来の贈与を適用する)ことができます。ただし、一度選択したら取り消すことはできません。



・暦年贈与
暦年贈与とは、暦年(11日~1231日)ごとに贈与を行い、その贈与額が年間110万円以下であれば、贈与税がかからない制度のことを言います。この110万円という非課税枠は、贈与を受ける者を基準として計算します。どういうことかというと、子供が父から50万、母から60万を同一年度に贈与された場合には、それを合計し110万円という計算を行います。
暦年贈与の具体的な仕方を次の3ステップで解説していきます。
(ステップ1)契約書を作成する
まずは、贈与契約書を作成します。
何のために作成するかというと、「いつ」「だれからだれに」「いくら」贈与しましたということを、後から誰が見ても分かるように客観的な証拠を残しておくためです。
(ステップ2)資金の受け渡しを行う
通帳に記録が残るように資金の移動を行いましょう。
贈与者(あげる側)の名義の銀行口座から、受贈者(もらう側)の名義の銀行口座へ直接振り込み処理を行うのがよいでしょう。振込手数料は、送金者側(あげる側)の負担で問題ありません。また、この資金の送金日と、ステップ1の贈与契約書の日付を同一にしておくようにしましょう。
(ステップ3)110万円以上の場合は贈与税の申告を行う
贈与する金額が、年間110万円を超える場合には贈与税の申告と納税の手続が必要となります。贈与税申告書に必要事項(誰からいついくらもらったのか、税額はいくらか)を記載し、税務署に提出し、贈与税を別途振り込みで納付するという一連の手続となります。



・定期贈与
定期贈与とは、定期の給付を目的とする贈与のことで、一定期間、一定の給付を目的に贈与を行うこと(定期金の贈与)をいいます。
たとえば、1,000万円を100万円ずつに分けて毎年贈与するという取り決めをすると、定期贈与とみなされます。
定期金の贈与とみなされると、贈与の開始時にすべての金額を贈与する意思があったとみなされて一括して贈与額の合計額に対して贈与税がかかってしまいます。贈与税の税率は、4,500万円を超えると55%になってしまいます。相続税は6億円を超えると税率が55%となるのと比較すると、かなり厳しいものだといえるでしょう。


執筆:ファイナンシャルプランナー鈴木 裕二