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短期譲渡所得・長期譲渡所得について

公開日:2020-07-31 15:09

目次

短期譲渡所得・長期譲渡所得について


不動産を売却することで発生する、短期譲渡所得もしくは長期譲渡所得という言葉をご存知でしょうか? 

個人が自宅や、所有している不動産を売却すると大きな金額の税金が発生することが多いです。

いざ売却してから、かかる税金に関して驚かないようにするためにも、税金の仕組みを知っておくことが重要です。


そこで今回は、自宅を売却する際に発生する税金に関してご説明していきたいと思います。

中でも「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」について記載していきたいと思います。

まずは両方に関係する「譲渡所得」という言葉について確認しておきましょう。

不動産を売却後、売却代金から仲介手数料や登記などにかかる必要経費を引いた金額が、譲渡所得です。つまりあなたの手元に残るお金のことを指します。また、特例控除制度に該当している場合には売却代金から必要となる金額が引かれます。

なぜ譲渡所得を正しく把握する必要があるかというと、手元に残った譲渡所得は税金の対象となるため、所得税と住民税を支払わなければいけないからです。


譲渡所得の計算式は、以下のようになります。


課税譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用


この計算を行って、課税譲渡所得がプラスのときは所得税と住民税が発生し、以下のような計算式となります。


所得税・住民税 = 課税譲渡所得 × 税率


では、短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いは何でしょうか。

不動産の所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得譲渡所得」となります。ただし、所有期間5年という区切りは、土地や建物を購入した日から売却した日までの期間で計算するわけではありません。売却する年の1月1日時点での所有期間で判定されます。


例えば、2012年9月1日に取得し2017年12月1日に売却した場合、所有期間は5年3カ月ですが、売却した2017年の1月1日現在での所有期間は4年4カ月なので短期譲渡所得



となります。2017年中に売れず2018年1月1日に売れた場合は、所有期間が5年と1カ月になるため長期譲渡所得になります。


また、取得日の定義については以下の表のようになります。


購入した場合 ⇒ 引渡完了日or売買契約完了日

建築工事により建物を建築した場合 ⇒ 引渡完了日

自営工事により建物を建築した場合 ⇒ 建築完了日


譲渡所得がプラスであった場合にかかる所得税と住民税は、短期譲渡所得か長期譲渡所得かにより税率が異なります。短期譲渡所得の場合は所得税30%・住民税9%。長期譲渡所得の場合は所得税15%・住民税5%になります。また、2013年から2037年までは、所得税・住民税に加え復興特別所得税もかかってきます。


復興特別所得税とは、2011年3月11日に起こった東日本大震災の被害から復興するための必要な財源の確保として新たに創設された税制度のことです。復興特別所得税の税率は短期譲渡所得・長期譲渡所得、共に2.1%になります。不動産売却時の譲渡所得にかかる税率をまとめると以下の表のようになります。


短期譲渡所得の場合

所得税30%

住民税9%

復興特別所得税2.1%

長期譲渡所得の場合

所得税15%

住民税5%

復興特別所得税2.1%


「10年以上不動産を保有したケース」

短期譲渡所得と長期譲渡所得の区切りは5年になりますが、長期譲渡所得に相当する10年以上不動産を所有している場合も税金が異なります。10年以上もの間、不動産を所有している場合には「10年超所有軽減税率の特例」を使うことができます。


譲渡所得6,000万円以下の場合

所得税10.21%

住民税4%

復興特別所得税2.1%

課税譲渡所得6,000万円超の場合

所得税15.315%

住民税5%

復興特別所得税2.1

「10年超所有軽減税率の特例」とは、居住用の不動産を売却した場合に、その不動産を10年以上所有していたならば、譲渡所得の税金の税率が低くなる特例ことです。税率については以下の表のようになります。



簡単に言えば短期譲渡所得に当てはまる物件を売った時の譲渡所得が、最も高い税率で税金を支払うことになり、10年超所有軽減税率の特例に当てはまる物件ならより低い税率で支払うことになります。

以上が、短期譲渡所得、長期譲渡所得、10年以上保有しているケースにおける税金に関してになります。


短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いや税率が分かったところで、実際にかかる税金の計算をしてみましょう。また、不動産売却を行う上で大切な特例についても説明します。


「譲渡所得の計算について」

そもそも譲渡所得がいくらになるのかを計算しましょう。譲渡所得の計算式は以下のようになります。


譲渡所得 = 売却代金 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除


「取得費について」

取得費とは仲介手数料や登記の費用など、不動産の取得に要した費用のことを言います。また、購入後の改築費用を加えることもできます。ただし、取得費からは経過年数に応じて減価償却費を差し引かなければいけません。


建物は建てられた時の値段のまま、価値が移行するわけではありません。年数に応じて古くなった分だけ、価値が下がります。そうした面も含めて、減価償却費を差し引くことが必要です。しかし中には取得した当時の値段がわからないこともあります。したがって取得費は次の計算のうちどちらか金額の大きい方を使用します


概算法

譲渡収入金額×5%

実額法

土地と建物の購入代金、建築にかかった費用、購入の仲介手数料やリフォームなどにかかった費用を合計した金額から、減価償却費を引いた額


「譲渡費用について」

譲渡費用とは売却するために支出した費用のことを言います。仲介手数料や登記費用、測量費、印紙代の他、建物の取り壊し費用や借家人に支払った立ち退き料なども含まれます。正確に計算できるように、売買に関わる領収書はこまめに整理し、保管しておきましょう。



「特別控除について」

特別控除の特例の種類は5種類あり、特別控除額が異なります。また、控除できる額は特別控除額にかかわらず課税譲渡所得の額が上限となり、特別控除額の合計は年間5,000万円が上限になります。詳しくは以下の表を参照して下さい。


公共事業のために土地建物を売却した場合

5,000万円

自己の居住用財産を売却した場合(居住用財産の3,000万円控除の特例)

3,000万円

特定土地区画整理事業などのために土地建物を売却した場合

2,000万円

特定住宅造成などのために土地建物を売却した場合

1,500万円

農地保有の合理化などのために土地建物を売却した場合

800万円



土地の値段に関しては、バブル時代など今よりも高い時期が存在します。

土地価格が高い時期に購入して、安い時期に売却すると、譲渡所得はマイナスとなることがあります。


譲渡所得がマイナスとなれば、所得税等の税金は発生しません。

土地譲渡による税金は、必ずしも常に発生するものではなく、購入や売却のタイミング次第では発生しないという点がポイントになります。