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遺言の書き方~公正証書編~

公開日:2020-11-28 15:18

目次


前回は自筆証書遺言について触れましたが、今回は公正証書遺言の作成方法等について触れてみたいと思います。

 

司法書士や弁護士等の専門家が、遺言の相談をされた場合、まず提案するのが公正証書遺言の作成です。

 

数ある遺言書の種類の中で、なぜ専門家は公正証書遺言を薦めるのでしょう?

 

それは、遺言者や遺言者の相続人に、大きなメリットがあるからです。

 

公正証書遺言と比較するため、自筆証書遺言のデメリットを挙げてみましょう。

 

自筆証書遺言を書く場合、全文自署・日付・氏名・押印のいずれかが欠けていると無効との判断が下される可能性があり、実際、無効と判断された遺言は過去に数多く存在します。

 

また、前記の有効要件をクリアしても、不動産の表記が住所で記載されている(法務局の名義変更手続きは、地番・家屋番号と言った住所とは違う特定方法が必要)ため、物件の特定ができず、有効だけれど法務局に手続き上受理されないといったケースもよくあります。

 

更に、自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、遺言を発見した相続人又は遺言の保管者において、遅滞なく遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ「遺言の検認」という手続きを経なければなりません。

 

この「遺言の検認」手続きを行い、検認調書を遺言に合綴してもらった後でなければ、不動産の名義変更・預貯金等金融資産の相続手続きで当該遺言書を使う事が出来ないのです。

 

一方、公正証書遺言の場合、上記ののようなリスクや手続きは一切ありません。

 

公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容・趣旨を公証人(公証役場所属の公務員であり、裁判官OB・検察官OBが大多数を占める)に告げ、公証人に遺言を作成してもらい、出来上がった遺言を公証人が遺言者に読み聞かせることによって完成します。

 

公証人関与の下、遺言書を作成することによって遺言無能力や不成立または改ざんのおそれもなく、有効性・証明力は非常に高いものとなります。

 

また、公正証書遺言は公証役場で半永久的に保存されますので、紛失のおそれもありません。

 

このような各種メリットを踏まえ、司法書士等の専門家は、遺言作成の相談を受けた場合、公正証書遺言作成をお薦めしています。

 

次に、公正証書遺言作成時の注意点です。

前述したとおり、公正証書遺言を作成するのは公証人なのですが、遺言の内容・趣旨は遺言者ご自身が考える必要があります。この点について公証人が具体的な助言をすることは通常ありません。よって、事前に遺言の内容・趣旨を検討し、公証人に対してその内容等を正確に伝えないと、希望通りの遺言が作れない場合があります。

 

また、遺言書の内容にも気をつけるべき点があります。

特定の相続人1人に、遺産のすべてを相続させる旨の遺言を書く場合、必ず他の相続人の遺留分(法的に認められた最低限の相続分)を侵害し、後々トラブルを招く恐れがあり、遺言の趣旨を実現できない場合があります。

 

遺言者より遺産を相続する相続人が先に死亡する場合もあり、その場合当該相続人へ相続させる旨の遺言は無効となります。これは、当該相続人(法律上、受遺者といいます)に子供がいる場合でも、特別な文言が記載されていない限り(予備的遺言といいます)同様です。

 

こういった事態を防ぐため、司法書士等の専門家が公正証書遺言の作成に関与する場合には、遺言者と公証人の間に入って、遺留分請求に対抗する提案や遺留分を侵害しない遺言内容の提案、遺言者より受遺者が先に亡くなった場合を想定して、予備的遺言の提案をする等、遺言が無効にならないよう、様々な工夫・提案をしていきます。

 

費用については、遺言作成に必要な戸籍・評価証明書等取得の為の実費、司法書士等の報酬・公証人報酬が発生しますが、費用をかけて作成していく価値は充分にあると言えるでしょう。

 

遺言を書こうと思われている方は、まずお気軽にご相談されることをおすすめ致します。


執筆:司法書士法人 鴨宮パートナーズ