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家族信託が注目される理由とは?

公開日:2020-11-28 15:30

目次


家族信託は、金融機関や専門家の間でまずは注目された制度です。しかし、近年、家族信託は高齢者の財産管理や相続手続きの為の手段として一般の方達にも浸透し始めました。

 

この制度が注目され始めた最大の要因は、日本人の長寿化により、従来の相続対策だけではなく、認知症などの病気にかかるリスクにも備える必要性が高くなり、それに柔軟に対応できる唯一の制度であったからです。

 

 

(1)認知症などへの備え

2015年に厚生労働省が発表した推計によれば、2025年には認知症患者は約700万人となり、65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。

 

認知症や脳梗塞などが原因となって本人の判断能力が低下すると、ご自身の判断で財産の処分などが行えなくなってしまいます。このような状態になった後では、相続対策を行うことも難しくなります。

 

 

(2)任意後見制度の限界

そこで、認知症対策として任意後見制度の利用が盛んに検討されるようになりました。任意後見制度は、被相続人が元気なうちに財産を管理する後見人を選定しておく制度ですが、実際に機能するのは判断能力が低下してからになります。

 

ただ、この制度を使うと、財産は裁判所の監督下に置かれ、財産の保全が求められます。そのため、実務上は活用しづらい面もあり、現在あまり利用されていないのが実状です。

 

 

(3)家族信託なら財産の承継に安心感がもてる

家族信託なら、信託契約の時点で受託者による資産の管理と運用が始まりますので、資産の管理や運用状況を本人が見届けることができます。

 

ただし、受託者には身上監護権がないため、老人ホームなどの施設への入居の際は本人に代わって契約手続きができません。一方、任意後見人には身上監護権が認められていますので、場合によっては任意後見制度との併用をしていくことも必要になります。

 

 

家族信託の活用事例

では、次に、家族信託の活用事例を見ていきましょう。

 

事例1:祖父の認知症などに備える(後見代用信託)

問.祖父は資産運用して利益を得たり、相続税の納税資金をつくるために不動産の一部を処分したいと考えている。しかし、将来、祖父の判断能力が低下すると、不動産を売ることはおろか、生活費の支払のために預金を下ろすことも困難になるので、どうしたらよいか悩んでいる。

 

 

答.祖父が元気なうちに息子などを受託者として契約を結んでおけば、もし祖父に判断力の低下がみられた場合であっても、息子が祖父の生活費などを代わりに支払うことができます。また、契約内容次第で、納税資金のために不動産を処分することも可能になります。

 

後見制度を利用することもできますが、この場合はリスクを取る資産運用を行ったり、納税資金を確保するために不動産を売却することはできません(後見制度はあくまで本人の財産管理の為のものだからです)。しかし、家族信託であればこのような事情にも対応することができます。

 

 

事例2:障がいのある子に財産を残す(死亡後の信託)

障がいがあって自分では財産管理ができない子がいる場合は、自分たちが死んだ後に子がひとりで生活していけるのかという不安をお持ちかと思います。そういった場合に、夫婦を委託者、信頼できる親戚を受託者、障がいを持った子を受益者とする信託を組むことで、将来の子の生活に備えることができるのです。


執筆:司法書士法人 鴨宮パートナーズ